砂漠の国で釣りをしよう。

 白水社の新叢書「エクス・リブリス」の一冊『イエメンで鮭釣りを』ボランジェ・エブリマン・ウッドハウス賞受賞作。

イエメンで鮭釣りを (エクス・リブリス)

イエメンで鮭釣りを (エクス・リブリス)

ルフレッド(フレッド)・ジョーンズ博士は、研究一筋の真面目な学者。水産資源の保護を担当する政府機関、国立水産研究所(NCFE)に勤めている。ある日、イエメン人の富豪シャイフ・ムハンマドから、母国の川に鮭を導入するため力を貸してもらえまいかという依頼がNCFEに届く。フレッドは、およそ不可能とけんもほろろの返事を出すが、この計画になんと首相官邸が興味を示す。次第にプロジェクトに巻き込まれていくフレッドたちを待ち受けていたものは? 手紙、eメール、日記、新聞・雑誌、議事録、未刊行の自伝などさまざまな文書から、奇想天外な計画の顛末が除々に明らかにされていく。(カバー裏より)


 もっと文学文学していて読むのに時間のかかる読み物なのかな、と思っていたら、びっくりするくらい読みやすい! メールのやりとり、往復書簡、日記、インタビューなどを集めた体裁になっていて、話し言葉やくだけた文章で書かれているので、あっという間に話に入り込め、すらすら読めます。
 振り回されっぱなしの水産学者。自分のキャリアしか興味のない妻。砂漠の国イエメンで鮭釣りをするという夢(?)を依頼した資産家。滑稽な広報官や首相、そんな人々が繰り広げる展開に、ほんとに苦笑してしまう。後半はしみじみした気持ちにもなり…。人間って複雑なのか単純なのか、面白い生き物だなあ、と。
 読みやすいので、翻訳物は苦手、という人にもおすすめです。