光と影の交錯する都市。

2003年度世界幻想文学大賞受賞作『影のオンブリア』

影のオンブリア (ハヤカワFT)

影のオンブリア (ハヤカワFT)

オンブリア―それは世界でいちばん古く、豊かで、美しい都。そこはまた、現実と影のふたつの世界が重なる街。オンブリアの大公ロイス・グリーヴの愛妾リディアは、大公の死とともに、ロイスの大伯母で宮廷を我が物にしようとたくらむドミナ・パールにより宮殿から追いやられる。だがそれはふたつの都を揺るがす、怖るべき陰謀の幕開けにすぎなかった…2003年度世界幻想文学大賞に輝くマキリップの傑作ファンタジイ!(カバー裏より)

 マキリップで一番有名なのは『妖女サイベルの呼び声』かなと思いますが、先月読んだ『影のオンブリア』がわたしにとっては初マキリップとなりました。
 久しぶりに色彩感・空気感のあるものを読んだなという…。色と色が混じり合う感じ、世界が透明ではなく、そこにまさに「空気」があると言いましょうか、にじんだりかすんだり溶け合ったり…誇張ではなく、まさにそんな世界。地上と地下の世界が明確にわかれず、影の都ばかりが幻想というわけでもないこの世界、独特の味わいが。訳者あとがきで書かれているように、まさに「重層する世界」なのです。
 7/11に聴きに行った対談(井辻朱美×金原瑞人)では、井辻さんは、読むのは大きな世界・世界観があるものが好きだけど、自分で翻訳するにはキャラクターがないとつらい、力を入れられるキャラがいないと著者と同じくらいのテンションに持っていけない、というようなことをおっしゃっていたのですが、この本の中にも正体不明のいろんな人物(?)が出てきます(改めて思い返すと正体不明者が多いなぁ)。
 マキリップを読んだことのない方はぜひ。たまには揺らめくような世界に浸るのもよしです。
 対談のもようはまた後日。