足跡をたどる02

 旅のともに持っていく本は、悩むが、これが楽しい悩みで、いつもうきうきしながら考える。
 旅をしながら、その土地のものを読むのも楽しいし、旅先でサスペンスを読むのも緊張感がアップして良い。ひとり旅以外のときは、わくわくする割にはたいして本は読めないので、いつも積み残して帰ってくるわけだが、それでも読みたい時に本がなかったら…という恐怖感に勝てず、多めに持っていくことになる(これは本を読みたい人にとっての共通項だろうか)。
 二泊三日という短期間で韓国に行ったときは、『いつも旅のなか』(角田光代/角川文庫)を読んでいた。旅行中に旅ものを読むのもなかなか楽しい。これは一編一編どれもが短い文章で、いろんな場所への旅について書かれている。作家というのは、つくづく切り取り方がうまい人種だなあと思う。
 帰り道に読んでいると、最後のほうに韓国への旅の話があり、「しまった、先に読んでおくべきだった」と思ったのだが、これを読むとずいぶんと変わったのだなあ韓国も、と感じずにはいられない。今の明洞は観光地化されて、日本語も通じるし、むしろ外国へ来た感がないくらいなのだから。
 著者の旅は、総じて、度胸も体力もないわたしにはとても真似のできない旅ばかりではあるが(あっても同じ旅はできないが)、「普通そんなに歩かないって!」などとツッコミを入れつつ、別の旅に連れていってもらえるのが、とても楽しい一冊である。

いつも旅のなか (角川文庫)

いつも旅のなか (角川文庫)

(足跡をたどる、は、まだ続く)