対談『世界文学の楽しみ方』を聴きに
5/25にあった紀伊國屋サザンセミナー。河出書房の文学全集最終巻・新訳『ブリキの太鼓』についてと、全集完結、今後の第三集の内容についての対談。池内紀×池澤夏樹。日程的にムリかなと思っていたのですが、聴きにいくことができました。
文学全集全体についての話は、なんとなくほかでも聞いたか読んだりしたような。著者が「移動している人」ばかりだなという。池内氏いわく、遊牧民というか定住しない人々の文学。
(池内)「その一冊目が『オン・ザ・ロード』というのは象徴的」
(池澤)「自分の好みももちろんあるけれど、今の時代がそうなっている。植民地の人、女性、言いたいことを持つ人がペンを持てるようになり、先進国じゃない国々からたくさんの作品が生まれている」
『ブリキの太鼓』や、第三集に入る『苦海浄土』は、まったく予習せずに行ったので、話を聞いて、ほぉーっと興味がわいてきました。『ブリキの太鼓』は、三歳で成長を止め、ガラスを割る声を持つオスカルの物語。『ブリキの太鼓』の話のなかで、池内氏が強調していたのは、ナチスドイツの時代について。
(池内)「「国家社会主義」と訳されることが多いけれども、あれは「国民社会主義」と訳すのが正しい。負の部分ばかりがクローズアップされるが、戦争がはじまるまでは「ナチス革命」と言ってもいい、国民による、社会をつくるための動きだった。その時代は国民にとって明るいものだった。その後、負の側面が出てくるわけだけども、その経緯は知っておいてもらいたい」
(池澤)「オスカルが三歳で成長を止めたのは、ナチスへ加わることへの拒否だったのだろうか」
(池内)「それもひとつの正しい見方だと思う」
(池澤)「オスカルは、戦後いまの我々と同じ視点をもって、時代をみていた。高揚する国民たちの中で、その当時、表に出てこない本質をみていたことになる」
『苦海浄土』は水俣病と人について書かれた第三部まである大作。全集でいちばん分厚い本になるとのこと。三部作を一冊で読めるのは、この全集だけ、だそうです(笑)。著者の石牟礼道子さんからのビデオレターがあり、観終わったあと、池内氏が「宗教的なイメージで読んでたけれども、間違いではなかったかな、と思う」と。
さて、対談後、サイン会があったのですが、対象本が全集の『クーデタ』『ブリキの太鼓』のみ。持ってるし。さすがに、もう一冊買うのはムリだと思って断念。ほかの著作も対象なら買ったのにな。ほかのサイン会やトークショーでも思うことですが、もうその本買っちゃったよって時どうすればいいんですかねえ。新たに買ってもらうための宣伝なのはわかりますが、ね。そんなわけで、そそくさと帰ってきました。(注:対談の内容は、個人的な聞き覚えによるものです)
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◀会場でもらった紀伊國屋書店のテイクフリー本「Scripta」。こんな冊子だしてたの、知らなかった。
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ちなみに第一回配本の『オン・ザ・ロード』は河出書房から、文庫も出てしまいました。。。ええー
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