世界を知る。

 『SFが読みたい!2010年版』を読んだせいか、数ページのみ読んでほうりだしてた『宇宙消失』に手をつける。これはっ。めちゃくちゃ面白い。なんだか、気分がうぉーっと盛り上がる(面白い本読むとテンションあがるという意味です、単純に)。これイーガンの第一長編だけど、長編ではいちばん読みやすいのではないか?(ディアスポラはまだ読んでないけど、多分読みやすくないだろう←決めつけ)。最初のほうはイーガンてこんなだったっけ?と思って読んでたのだけど、どんどん、量子力学アイデンティティの問題になって、やっぱりイーガンだ。
 『SFが読みたい!2010版』のゼロ年代ランキングを見てると、けっこう傾向が偏っている気がして、ふーん、ゼロ年代てこういう感じなのか、と、つい傍観者気分で。出版社のSF関連情報、河出書房の叢書〈ストレンジ・フィクション〉(「奇想コレ」の長編版?)が気になります。

宇宙消失 (創元SF文庫)

宇宙消失 (創元SF文庫)

SFが読みたい!〈2010年度版〉発表!ベストSF2009 国内篇・海外篇

SFが読みたい!〈2010年度版〉発表!ベストSF2009 国内篇・海外篇

全集に足を踏み入れる。

 一冊の本を読み終わる。次の本を手に取る──。
 次に何を読むか?でパニックになる、ってことはありませんか? ないですか。
 あのシリーズも読みたかった、こっちの叢書も手をつけてない、あれもこれも…と本をひっくり返しているうちに、気持ちが押しつぶされ時間が経ってしまうので、最近はちかいうちに読もうと思っている本を、“積んで”いるのです。。。
 気分によって並べ替えたり、本棚から出したり戻したり。最初は10冊くらいだったのが、だんだん増殖して雪崩を起こしそうな雰囲気に。順番どおり読んでるわけでもないけど、意外と有効です。
 ちなみに積み本の一番うえに置いてあるのは、河出の世界文学全集のチラシ。セット買いしたんだから、読めよ、という自分への戒め。

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 エリック・マコーマック『パラダイス・モーテル』(東京創元社を図書館から借りてきて読む。
 以前、同じ著者の『隠し部屋を査察して』(創元推理文庫を読んでから、こっちの単行本も読んでみたかったけど絶版になっていたので、すっかり忘れていた。
 パラダイス・モーテルのバルコニーでうたた寝をしながら、男は昔、祖父が語った外科医の話を思い出す。その島へやってきた外科医は、妻を殺して、その一部を、四人の子供に体内に埋め込んだというのだ。その子供たちはどうなったのか、男はふと調べてみる気になった…。
 と、ここだけ抜き出すとまるっきり猟奇ミステリのようでもある。けど、見返しの紹介文にも「虚実の皮膜を切り裂く〈語り=騙り〉の現代文学!」とあるように、祖父の話、自己喪失者研究所の所長の話、退職した新聞記者の話、…どんどん広がっていき、本筋と関係ない細部の広がりも読ませるし、最後も…。第二長編『ミステリウム』も翻訳されればいいのに。絶版になっているくらいだからなぁ、期待薄か。

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 『世界文学ワンダーランド』(牧眞司本の雑誌社に、『パラダイス・モーテル』の紹介が載っている。この文学ガイド、前から持っていたのだが、思いついたときに読みたいところからつまみ読みしていたら、どこを読んでないのかわからなくなってしまった。ので、最初から読み直そうとしはじめたのである。
 そのなかで出てきた『やし酒飲み』。これは全集に入ってる。『精霊たちの家』も入ってる。読まねば、読まねば…。で、やっと全集に手をつけはじめる(遅い…)。『やし酒飲み』を読んだ。同じ本に収録されている『アフリカの日々』をいま読んでいる…。そして、合間にちがう本も読んでいる…

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

世界文学ワンダーランド

世界文学ワンダーランド

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)

足跡をたどる02

 旅のともに持っていく本は、悩むが、これが楽しい悩みで、いつもうきうきしながら考える。
 旅をしながら、その土地のものを読むのも楽しいし、旅先でサスペンスを読むのも緊張感がアップして良い。ひとり旅以外のときは、わくわくする割にはたいして本は読めないので、いつも積み残して帰ってくるわけだが、それでも読みたい時に本がなかったら…という恐怖感に勝てず、多めに持っていくことになる(これは本を読みたい人にとっての共通項だろうか)。
 二泊三日という短期間で韓国に行ったときは、『いつも旅のなか』(角田光代/角川文庫)を読んでいた。旅行中に旅ものを読むのもなかなか楽しい。これは一編一編どれもが短い文章で、いろんな場所への旅について書かれている。作家というのは、つくづく切り取り方がうまい人種だなあと思う。
 帰り道に読んでいると、最後のほうに韓国への旅の話があり、「しまった、先に読んでおくべきだった」と思ったのだが、これを読むとずいぶんと変わったのだなあ韓国も、と感じずにはいられない。今の明洞は観光地化されて、日本語も通じるし、むしろ外国へ来た感がないくらいなのだから。
 著者の旅は、総じて、度胸も体力もないわたしにはとても真似のできない旅ばかりではあるが(あっても同じ旅はできないが)、「普通そんなに歩かないって!」などとツッコミを入れつつ、別の旅に連れていってもらえるのが、とても楽しい一冊である。

いつも旅のなか (角川文庫)

いつも旅のなか (角川文庫)

(足跡をたどる、は、まだ続く)

足跡をたどる01

 あけましておめでとうございます。
 なんだかんだと年末の挨拶もできず。。。申し訳ありません。
 たまには足跡を残そう!ということで、遡って、いくつか読んだ本。


『ジャンピング・ジェニイ』アントニイ・バークリーシェリンガムもの(創元推理文庫)。
 ロジャー・シェリンガムは、名探偵ならぬ〈迷〉探偵。ラストで颯爽と「完璧な」推理を披露してくれる名探偵とは違い、ああでもないこうでもないと、時におかしな推理を語りだす。
 今回の舞台は、有名な殺人者&被害者に扮する仮装パーティ。って、現代日本人のひとりとしては、何だそりゃと言いたくなるような趣向のパーティだが、その余興には、悪趣味なことに屋上に絞首台が設えてあり、予想通り(?)パーティの終わりにはそこにぶら下がる人間が…。なんと「探偵役が証拠隠滅をはかろうとする」とんでもない物語で、いちばん捜査を(読者も)引っ掻き回すのが探偵役なのである。
 バークリーの意地の悪さが効果的に出た一作。笑えます。2002年版このミス6位、本ミス1位というのも頷ける〈本格〉ミステリ。

ジャンピング・ジェニイ (創元推理文庫)

ジャンピング・ジェニイ (創元推理文庫)


『幽霊の2/3』復刊リクエスト第一位で世に戻ってきたヘレン・マクロイ幻の名作創元推理文庫
 出版社社長宅のパーティで、余興のゲーム〈幽霊の2/3〉の最中に、人気作家が毒を飲まされて死ぬ…。誰がなぜ、どうやって? 招待客のひとり、精神科医ベイジル・ウィリング博士が調べはじめると意外な事実が明らかになってくるが…。
 この物語が秀逸なのは、途中まで読み進むと、一変して〈本当の謎〉が提示されるところ。そういう話なのか!と思わされること必至です。杉江松恋氏の解説がこの面白さをうまく説明していると思うので、未読の方はぜひ解説を立ち読みしてみてください。

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

幽霊の2/3 (創元推理文庫)


『煙突の上にハイヒール』(小川一水/光文社)
 SF度の若干低い、普通小説寄りの短編集。
 そのなかでは、ロボットが人間とともに暮らすのが普通になっていく世界を描いた「おれたちのピュグマリオンパンデミック後の社会・人間を描いた「白鳥熱の朝に」が、SF成分が高くて面白い。

煙突の上にハイヒール

煙突の上にハイヒール

(次の足跡をたどるへ、つづく)

年末ミステリランキング

久しぶりの更新です。
クソ忙しい年の瀬で(口が悪いな…)インフルも流行っているようですが、皆様元気でお過ごしでしょうか。

年末の風物詩、ミステリランキングの季節です。
このミステリーがすごい!(このミス)は、去年からジャンル別コラムがなくなって、個人的にはつまらなくなったなあと感じていたのですが、ますます…。書籍の解説も投票者のコメントも、文字を大きくしたようで情報量がかなり少なくなってしまった。ランキング本なのだから小説は載せなくていいですよ。。。(もちろん作家が悪いわけではないですが。) 結局、対談しか読んでません。定価下げなくてもいいから、コラムとか増やしてもらえないですか、宝島社さん。10年以上買っていますが、来年は買わなくていいかも。
本格ミステリ・ベスト10』(本ミス)は去年と変わらない感じ。もう少し海外分にページを割いてもらえるとうれしいです。あんまりミステリの内容とは関係ないと言えば関係ない「装幀大賞」の座談会とか毎年(けっこう楽しく)読んじゃってます。
『ミステリが読みたい!』(早ミス)は、前年号で来年はいらないなと思っていたのですが、たまたま人から頂いたので読んでみました。今年号から大幅リニューアル。ストーリー/キャラクター/サプライズ/ナラティヴの4つの基準で評価。そして海外・国内のベスト100ガイドを作成。なかなかうれしい試みです。内容紹介とともに、投票した人数と平均点、そしてコメントも少しずつ記載されるので、面白い。得点の高い低いは平均点を取る以上、高いからいいとは限らないでしょうが、一冊の本でナラティヴだけがすごく高ければ「文体」で読む本かなとか、キャラクター小説だなとか、トリックがすごいとか、ある程度傾向が想像できるところがポイント。あとは、少人数で得点が高いと「好きな人にはすごく受ける」小説で、大人数で点数が低めだと「みんながまあまあ面白いよ」っていう小説なのかなと考えたり。これは集計するのも大変だと思いますが、続けてほしいですね。一年に出る本でベスト100まで紹介してくれるものはなかなかありませんし。
 というわけで、今年度は「早ミス」をプッシュ! 巻末の“海外ミステリ オールタイムベスト100 forビギナーズ”もわりといいです。
「早ミス」のなじめない点をひとつ挙げるなら、一年が10月〜9月なこと。通常の10月〆のベストよりも、さらに「年間」より離れてしまったよ。。。
 ちなみに「週刊文春」のミステリベストは毎年チェックしていないのでよくわかりません。

近いうちに、11〜12月に読んだ本について更新できれば、と考えています。が、未定です! 年内には更新したいとは思っていますが。。。

ミステリが読みたい!〈2010年版〉

ミステリが読みたい!〈2010年版〉

本格ミステリ・ベスト10 2010

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こちらもオススメ。

おすすめ文庫王国2009年度版

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足跡12 

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)  09/10/26
 『宇宙消失』は読む時間がまったくなくて読み終わっていませんが、本屋でこれを購入したので、ぼちぼち読んでみています。

妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする音楽家、からだの感覚を失って姿勢が保てなくなってしまった若い母親、オルゴールのように懐かしい音楽が聞こえ続ける老婦人―脳神経科医のサックス博士が出会った奇妙でふしぎな症状を抱える患者たちは、その障害にもかかわらず、人間として精いっぱいに生きていく。そんな患者たちの豊かな世界を愛情こめて描きあげた、24篇の驚きと感動の医学エッセイの傑作、待望の文庫化。

 同じ著者オリヴァー・サックスの『火星の人類学者』も興味深かった(こちらのほうが後の著作だ)のだが、これもまたいろんな神経学の症例が書かれている。面白いと思うことは失礼なのかもしれないが、脳機能の不思議さ、そして人間というものの深さに驚かされる。

足跡11

宇宙消失 (創元SF文庫) 宇宙消失 (創元SF文庫)  09/10/20
 楽しい長編がよみたいなぁと、これを発掘。どうにもセレクトが間違っている気もするが(楽しい?)、イーガンは好き。まだ『ディアスポラ』も『TAP』も読んでないけどね。。。『ディアスポラ』難しそうだけど、いつかは読むさ!